治療について

目次

監修
群馬大学名誉教授 黒沢病院予防医学研究所所長 山中 英壽 先生
協力
黒沢病院予防医学研究所 加瀬 嘉明 先生

治療について

前立腺がんには、「手術療法」、「放射線療法」、「ホルモン療法(内分泌療法)」など、さまざまな治療法があります。これらの治療を単独あるいは組み合わせて行います。

治療法は、がんの進行度(広がり)や悪性度、また、患者さんの全身状態、年齢などを考えて、最適な方法を選択することになります。主治医とよく相談の上、納得のいく治療法を選択するようにしましょう。

手術療法 前立腺全摘除術
放射線療法 外部照射療法
組織内照射療法
ホルモン療法
(内分泌療法)
去勢術(精巣摘除術)
薬物療法
・LH-RH(GnRH)アゴニスト
・LH-RH(GnRH)アンタゴニスト
・抗男性ホルモン剤
・女性ホルモン剤
PSA監視療法 定期的なPSA値の検査で経過観察
化学療法剤
抗がん剤による治療)
植物アルカロイド、アルキル化剤等
緩和的療法 疼痛対策、脊髄麻痺対策

TNM病期分類(UICC 第7版,2009年)による治療法

病期 I、II 期
病期 I、II 期
病期 I、II 期は、がんが前立腺内にとどまっている早期がんであり、根治可能と考えて治療を行います。

T1a(とくに高齢者)では、治療を行わずに経過観察するのが一般的です。経過観察の利点は、手術や治療に伴って生じる可能性がある副作用を避けられる点です。定期的にPSA値の検査を行い、経過を見守っていくことになります。

T1b、T1c、T2a、T2b、T2cでは、前立腺全摘除術もしくは放射線療法、内分泌療法が行われます。

前立腺全摘除術は、全身状態が良好な70歳くらいまでの患者さんが対象となります。
放射線療法には、外部照射療法と組織内照射療法があり、がんの悪性度(グリーソン・スコア)やPSA値に応じて単独あるいは併用で行います。とくに年齢による規定はありません。
内分泌療法は、高齢者では単独で行われることが多いのですが、グリーソン・スコアの高値例やPSA高値例では、ほかの治療と併用で行われます。
病期 III 期
病期 III 期
病期 III 期は、がんが前立腺の被膜をこえて進展している段階です。限局がんに比べると根治の可能性は低くなりますが、下記の治療により良好な結果が期待できます。

治療は内分泌療法単独または放射線療法と内分泌療法の併用で行います。(また、手術を行う場合には、手術前に内分泌療法でがんを小さくしたり、手術後に放射線療法や内分泌療法を行います。)
病期 IV 期
病期 IV 期
病期 IV 期は、精嚢以外の隣接組織に浸潤したり、リンパ節やほかの臓器に転移がみられる段階であるため、基本的には内分泌療法で全身的な治療を行います。
転移による痛み、神経の麻痺に対しては放射線療法などが併用されることもあります。