前立腺がん大辞典

監修
群馬大学大学院医学系研究科 泌尿器科学分野
教授 鈴木 和浩 先生

医療用語は専門家が使うため、一般の方々には耳慣れない言葉が多いと思います。ここでは、がん医療で比較的多くつかわれる用語について説明いたします。

索引

直腸内触診 [ちょくちょうないしょくしん]

指を肛門から直腸内に入れて診察する方法。

痔、直腸がん、前立腺肥大症、前立腺がんの診断に役立つ検査です。特に前立腺については、直腸内の壁ごしに触れることができるため、大きさ、位置、硬さなどがよくわかります。前立腺は本来、弾力性を持っていますが、前立腺がんの場合で進行したものでは、がんの部分がゴツゴツしていて石のように硬いので、泌尿器科の専門医ならがんを疑うことができます。

また、前立腺の大きさは本来、くるみ程度ですが、前立腺が肥大している場合は鶏卵程度からさらに大きくなっているため、直腸診でもわかりますし、経直腸的超音波検査を併用すると、前立腺のより客観的な情報が得られます。

テストステロン [てすとすてろん]

主に精巣でつくられる男性ホルモン。

精巣のほか、副腎からもわずかに分泌されています。テストステロンなどの男性ホルモンは体の様々なところに関係するホルモンです。前立腺がんの場合はテストステロンに刺激されて、発生し進展します。そのため、テストステロンの分泌を減らしたり、働きを妨げたりする薬をもちいたホルモン療法が行われます。前立腺がんで精巣をとる外科治療(除睾術)は、テストステロンの分泌を減らすために行うものです。

転移 [てんい]

がんが体内の他の場所に飛び火すること。

がん細胞はどんどん増えてかたまりを作りますが、そのうちの一部のがん細胞が血液やリンパ液の流れに乗るなどして、別の場所に飛び火し、そこで新たなかたまりを作り始めます。これが転移と呼ばれるものです。がん細胞の転移は、骨や臓器など多岐にわたりがんの種類によって転移しやすい場所もさまざまです。転移があると、もともとがんができた場所だけを手術で切り取ったり、放射線で治療したりしても、がんを治したとは言えません。

一般に、転移を伴うような進行がんでは治療が非常に難しくなります。つまり、転移があるかどうかは、治療法を決める際の大切なポイントの一つです。