検診と診断方法は?

目次

監修
群馬大学名誉教授 黒沢病院予防医学研究所
所長 山中 英壽 先生
協力
黒沢病院予防医学研究所 加瀬 嘉明 先生

検査と診断について

診断のながれ、検査の順序、方法については、施設によっても異なります。検査については主治医とよく相談してから行うようにしましょう。

スクリーニング検査

がんの可能性のある人を
見つけるための検査

一次スクリーニング

確定診断

がんを確定するための
検査

病期診断

がんの進行度(広がり)を
確認するための検査

検査の種類について

スクリーニング検査には「PSA(前立腺特異抗原)検査」「直腸内触診」「経直腸的超音波(エコー)検査」「前立腺MRI検査」があります。

PSA検査

血液検査によりPSAの値を調べる検査です。

直腸内触診

前立腺の全体の大きさ、硬さ、表面のなめらかさ、ふれると痛みがあるか、などを判定します。

経直腸的超音波検査

肛門から棒状の超音波探子(プローブ)を直腸に挿入し、前立腺の内部を画像で観察します。

  • 前立腺
  • 前立腺がんの被膜外浸潤部分

前立腺MRI検査

前立腺がんの疑い症例の局在診断や生検のガイドとしてMRIは有用性を発揮します。

  • ※T2強調画像

PSA検査とは?

PSA検査は、採血のみの検査で、血液中にある前立腺に特異的なタンパク質の一種「PSA」の値を測定します。スクリーニング検査のなかで、もっとも精度が高く、簡単に受けることができます。
PSAの値が高くなるにつれ、前立腺がんである確率も高くなっていきますが、年齢により基準値が設けられています。
PSAの値は、前立腺肥大症や前立腺炎でも高値になることがあるため、基準値以上の値が出ると、専門医を受診し、前立腺がんであるかを確定するための、より詳しい検査を受けることになります。

年齢階層別基準値による前立腺がん検診のお勧め

年齢 基準値 PSA値
P1.0ng/mL以下 1.1ng/L〜基準値 基準値以下
50〜64 3.0ng/mL以下 3年に1度検査 1年に1度検査 専門医受診
65〜69 3.5ng/mL以下 3年に1度検査 1年に1度検査 専門医受診
70〜 4.0ng/mL以下 3年に1度検査 1年に1度検査 専門医受診

PSA基準値以下の進行がん(PSA陰性がん)を見逃さないためには、直腸内触診を。
人間ドック受診の機会がある方、父、兄弟、子に前立腺がん患者がいる場合は、40歳からの定期検診を。

PSA検査が有用な理由

前立腺がんの早期発見にはPSA検査が有用です。
PSAとは前立腺に特異的なたんぱく質の一種で、前立腺がんになるとPSA値が高くなります。
PSAは正常の場合でも血液中にわずかに存在しますが、前立腺がんになると血液中に大量に流れ出ます。
PSA検査はこの性質を利用した精度が高い優れた検査法です。

1年に1度の検査

前立腺がんの危険因子のひとつは「年齢」です。
50歳を過ぎると罹患率が急激に増加するため、50歳を過ぎたら1年に一度受けることが推奨されています。
なお、前立腺がんのかかりやすさには、「家族歴」もあげられています。そのため、前立腺がんと診断されたご家族のいる男性は、早期発見のためにできれば40歳になったらPSA検査を受けることが勧められています。
また、人間ドックなどの受益者負担によるPSA検査は、がん発見率は低いのですが、高危険度群の同定のために、40歳からの測定が勧められています。

※日本泌尿器科学会編 前立腺がん検診ガイドライン2010年増補版

年齢階級別推定罹患率(2008年)

図:年齢階級別推定罹患率(2008年)

定期的な検査の効果

PSA検査は、定期的に受けることが勧められています。
前立腺がんは、自覚症状がほとんどないために発見が遅れることが多いがんです。自覚症状が出てから泌尿器科外来を受診し発見される前立腺がんの約40%はほかの臓器に転移しており、一方、PSA検査などの検診で発見された前立腺がんの約60%は早期のがんだったという研究結果があります。

前立腺がんにおける外来発見がんと検診発見がんの臨床病期の比較

図:前立腺がんにおける外来発見がんと検診発見がんの臨床病期の比較

確定診断まで

直腸に超音波探子を挿入し、前立腺の画像を映しながら、がんの場所やがんの好発部位などをねらって、自動生検装置(バイオプティガン)にて針を刺入し、6箇所以上の組織を採取します。
採取した組織を顕微鏡で観察して、がんがあるかどうか、また、がんがあった場合には、その悪性度を確認します。
生検は直腸から針を刺入する方法と、会陰部(肛門と陰嚢の間の皮膚)から針を刺入する方法があります。

画像検査

がんが前立腺内にとどまっているのか、周囲の臓器に浸潤しているのか、または遠隔臓器やリンパ節に転移しているのか、などを確認することができます。

  • ※骨盤部CT画像

針生検

組織を採取し、がん細胞の有無やその悪性度を調べます。

骨シンチグラフィー

放射性物質ががんの転移のある骨に集まる性質を利用した検査です。